一ノ倉沢烏帽子沢奥壁 中央カンテ

TK2と一ノ倉沢の中央カンテを登りに行きました。
駐車場を3時半に出発し、真っ暗な道をヘッデンの明かりで一ノ倉沢出合まで歩きましたが、なんと平日にも関わらず僕らの他にも2パーティが歩いていてビックリ。
中央カンテは他のパーティが居ると落石がヤバいと聞いていたので、先行するのもされるのも嫌だなと思いましたが、他のパーティはみんな南陵に行くみたいで一安心。
さらに後から3人パーティがもう1組来ましたが、そのパーティも南陵で、この日の南陵は3パーティが順番待ちをしながら登る盛況ぶりでした。
ちょうど出合に着いた頃には明るくなってきて、一ノ倉沢の全容が見えてきました。
ここに来るのは6年振りですが、この岩場はどこか他の岩場とは違う、厳かな雰囲気が漂っています。

雪渓の上を30分ほど歩いてテールリッジに取り付きました。
僕らが先頭でしたが、後続のパーティもどんどんテールリッジを登ってきます。

1時間ほどでテールリッジを登り終え、中央カンテの取り付きに到着。
ここまでの登りで結構疲れたので、取り付きで大休止しながら登攀の準備をして、6時50分頃に登攀開始。
まずは僕がリードで1ピッチ目を登り始めます。

4ピッチ目を登るTK2。
3~4ピッチ目がルート名にもなっている大きなカンテを登るところですが、快適なフェイスのクライミングが長く続いて楽しいところでした。
ただここまでに思ったよりも時間がかかってしまい、4ピッチ目を登り始めたのが8時40分頃でしたが、かなり気温が上がってきて、日差しも強くて辛かったです。

5ピッチ目のチムニー。
登り自体は特に難しくはありません。
ですが、今回はできるだけ自分が持ってきたプロテクションで登りたいと思って色々持って来ていたのに、持参したプロテクションは全く使えず、完全に残置ハーケンに頼って登りました。
ちなみにここまでの各ピッチでも、自分で持ってきたプロテクションはほとんど使えず、基本的には残置支点頼りで登りましたが、残置支点の数はどのピッチもかなり少なく、普通のフリークライミングの感覚で言ったらどこも激しいランナウトが続く感じでした。
僕はまだハーケンを自分で打ったことがないのですが、もし自分でハーケンが打てたら、プロテクションを採ることができたのかなぁと思います。
実際にハーケンを打つかどうかは別として、どうしても必要なときにはハーケンを打てるように、たまにどこかで練習はしておきたいと思いました。

そして核心の7ピッチ目。
出だしの垂壁が結構難しくて、その部分が核心かと思いましたが、最後のコーナークラックもしっかり難しかったです。
ここはちゃんと自分でカムをセットしながら登れて、良い気持ちで登れました。
垂壁部分もコーナークラックもお助け紐がぶら下がってましたが、もちろん使わずにフリーで突破。

次の8ピッチ目はTK2がリード。
ここも残置支点が少なく、何もプロテクションが採れないまま登っていったら、登りやすいラインを微妙に外してしまい、ちょっとしたピンチ到来。
一時的に進退窮まってしまい、どうなることかと思いましたが、なんとか近くにあったクラックにカムを効かせて、そのまま登り続けることができました。

ちなみにここまでのピッチは、中間の残置支点は古びたハーケンばかりでしたが、ビレイ点はグージョンのボルトが2つ打ってありました。
しかし8ピッチ目の終了点っぽいところは、グージョンのボルトが1つと古いリングボルトが1つしかなく、TK2がそのままトポの9ピッチ目の前半部分を登ってピッチを切り、9ピッチ目の後半にあたる30mのところを僕が登って、烏帽子岩の肩に到着。

中央カンテは本来は10~11ピッチのルートで、ここから烏帽子岩の左のヌルヌルのルンゼをもう1ピッチ登って草付きに出て終了だそうですが、近年は烏帽子岩の肩から懸垂下降して降りることが多いようなので、僕らも今回はここで終了することにしました。
登りで思っていたよりも大分時間がかかってしまい、この時点で既に13時。
急いで下降に取り掛かります。

烏帽子岩の肩から懸垂下降。
50m1本でもギリギリ降りれるらしいですが、2本つなげて笹薮帯の辺りまで降りました。
下降後にロープを引こうとしたら、岩角に結び目が引っかかって動かず焦りましたが、若干斜めに引ける位置まで移動したらロープが動きました。
下降するときに結び目を岩角の下に移動させておけばよかったです。

降りたところの笹薮の中に、南稜の終了点の方へ歩いて行ける踏み跡があると聞いていて、確かに上から見た時は明瞭な踏み跡があったように見えたのですが、降りたところで笹薮の中に道を探してもなかなか見つかりません。
笹薮帯も傾斜は急でしたが、笹を掴んで横に歩くことはできたので、一旦TK2をその場に残して、僕だけで何も見えない笹薮の中をどんどん進んでみたら、南稜の終了点っぽい開けた場所に出ました。
その場所からは、元々居た方へ向かう明瞭な道があったので、その道を歩いてTK2と合流し、無事に南陵の終了点を経由して6ルンゼの懸垂支点まで行くことができました。

辿り着いた懸垂支点は、南稜の最終ピッチの終了点のところよりは少し上の地点で、そこから6ルンゼ内を2回懸垂下降したところで、左岸側にピカピカのラペルステーションを発見。
その次の懸垂で、大きな岩が見えているところを南稜4ピッチ目の草付きの方向に降りていかないといけないのですが、うっかり真っすぐ降りてしまい、再び6ルンゼの岩溝の中に入ってしまいました。
ルンゼの中にも懸垂支点があったので僕はそこでピッチを切って、TK2に近くまで降りてきてもらって、一段上の懸垂支点でロープをセットし直してもらって、僕が居るルンゼの底までロープを垂らしてもらい、僕はそのロープを使ってトラバースしてルンゼから脱出。
上の写真はルンゼから脱出してきたところですが、南稜を下降するには左の草付きの方へ降りるのが正解です。

草付きを歩いて降りて、その次の懸垂下降は南稜1ピッチ目のチムニーの下でピッチを切り、最後はロープが届くところまで烏帽子スラブを降りて下降終了。
この最後の懸垂下降の後でロープが引けなくなるということを、過去に自分でも経験したし、周りからもよく聞いていたので心配してましたが、問題なくロープの回収もできました。
チムニーの下の支点を使えば引っかかりの心配はほとんどないと思います。
下降も色々あったので、烏帽子岩の肩から降りてくるのに3時間半ぐらいかかってしまいました。
とりあえず明るいうちには帰れそうで一安心というところですが、まだテールリッジの下降があるので、最後まで気が抜けません。

テールリッジの下降は乾いていてもやっぱり怖いところがあるので、3回ほどロープを出して懸垂下降しました。
そして18時45分に一ノ倉沢出合に到着。
雪渓から舗装路に降り立つと同時に、TK2と握手と抱擁を交わしました。
かなりの長時間行動となり、お互いに肉体的にも精神的にも疲れ果ててましたが、とにかく無事に帰ってこれてよかったです。
今回は色々なことがありましたが、それだけに得たものも多く、大きな充実感をもたらしてくれた山行でした。
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