明神岳 東稜


2024年5月13日(月)~14日(火)
5月の会山行で明神岳東稜を登ってきました。
今回のメンバーは僕と、梅さん、カトさん、そーた、HSGの5人。

このルートは幕営装備を担いで1泊2日で行くパターンと、荷物を軽量化して日帰りで行くパターンがあります。
幕営する場合は明神から3時間ほどのところにあるひょうたん池というところでテントを張ることが多いようですが、それなら軽量化して早めに出発した方が快適に登れそうなので、今回は日帰りでトライすることにしました。
日帰りとは言っても、早い時間に出発する為には前日から上高地に入っていないといけないので、日程としては結局1泊2日は必要になります。

そして山行の日が近づいてきて天気予報を確認すると、1日目は全国的に大雨という予報でしたが、登攀日にあたる2日目は快晴の予報。
テント泊の予定だったら中止にしたかもしれませんが、2日目さえ晴れていれば大丈夫だろうということで決行することにしました。



1日目はのんびりと15時過ぎに上高地に到着。
到着したときは雨がザーザー降りだったので、しばらくビジターセンターの中で雨が弱まるのを待ち、小降りになってから小梨平に移動してテントを設営。

テントを張って食事を終えたら、後は出発に備えて寝るだけ。
0時に起床して1時に出発する計画なので、18時にはもう床に就きました。

しかしこんな早い時間に眠ることなんて普段はないので、当然ですが眠れません。
明日は長時間行動になるから、できるだけ眠らないといけないと思い、目を閉じてひたすら眠ろうとしましたが、なかなか眠れず、少し眠っては目が覚めてを繰り返し、やがて起床の時間になりました。

Garminのスマートウォッチに付いていたスリープトラッカーの機能によると、合計で2時間半は眠れていたようです。

明神岳東稜を日帰りでアタックする場合は、この前日の睡眠が最初の核心だと思います。



1時5分に小梨平を出発し、まずは明神まで30分ほど歩きます。

明神橋を渡って、信州大学の山岳科学研究所の前を過ぎたところに、登山口となる丸木橋があります。



丸木橋を渡ると、踏み跡というよりは登山道というようなしっかりした道があり、ヘッデンの明かりでも問題なく歩けます。
道は途中から下宮川谷に入り、ガレた沢筋をどんどん詰めていく感じになります。

下宮川谷の途中から右の方に入って行くはずでしたが、気が付くとガレ沢を詰め続けたまま標高1900mぐらいまで上がってきてしまい、分岐を見落として登りすぎてしまったということに気付きました。

左側に注意しながら、登ってきた沢筋を下っていくと、30分ほど下ったところで、左側(登っている人から見ると右側)の木にピンクテープがあり、岩にもペンキで印が付けてあるのを発見。
1時間ちょっとロスしてしまいましたが、無事にルートに復帰できました。



その後は踏み跡を辿って登り続け、宮川のコルを越えたあたりから視界が開けてきて、左には大きな岩壁が見え、明神岳の主稜線も見えてきます。
明神岳ってこんなにかっこいい山だったんだなと思いながら、上宮川谷の雪渓を横切り、長七ノ頭の左にあるひょうたん池を目指して登っていきます。

途中で結構な藪があり、藪漕ぎに時間をとられましたが、先日kwtさんと共にガチの藪山を登ってきたHSGに言わせると、このぐらいは藪ではないそうです。
ちなみにkwtさんとHSGが行ったガチの藪山の記録はコチラ



藪ゾーンを抜けると明神岳の東稜がよく見えてきます。
今回来る前に他の人が5月に東稜を登った記録をいくつか見てきましたが、他の人の記録で見た写真と比べるとすごく雪が少ないように感じます。

ひょうたん池は長七ノ頭の左のコルの部分にあるようなので、ひょうたん池を目指して雪の付いた部分を登っていきます。



5時半頃、ひょうたん池の辺りに到着した僕。
ここからいよいよ明神岳東稜の登攀開始です。

いきなり行く手を阻むような岩壁が聳えていて、テンションが上がります。
ちなみに僕の奥の方に見えているピークは前穂です。

ひょうたん池の手前がなかなかの急登だったので、ここで全員揃うのを待って大休止。
そーたがちょっとバテているみたいで、やや遅れていました。

ルートはここからが本番というところなので、そーたの奴大丈夫かなぁと少し心配する気持ちもありましたが、大体これまで仲間たちとアルパインのルートに行くときは、僕がいつも最後尾を少し遅れて歩いていく感じで歯痒い思いをしてきたので、今回はそーたのおかげでそうならなくて済みそうだと思い、大いなる安堵感と共にそーたへの感謝の気持ちが湧き上がってくるのを感じました。

ありがとうそーた。
でもお前唯一の20代なんだからもっと頑張れよ。



そして東稜を登り始めると、すぐに草付き混じりの岩場が出てきます。
多分ここが最初の核心の「第一階段」と呼ばれているところです。
概ね階段状で、微妙にホールドが乏しい箇所がありましたが、ロープは出さずに登りました。



先輩からアイゼンワークの指導を受けながら雪の斜面をトラバースするそーた。
そーたはノミックしかアックスを持っていないので、この日も両手にノミックを持ってましたが、半袖で素手で両手にノミックという姿がとても斬新な感じに見えて、これから先何かをやってくれそうな感じがしました。



そーたを追い抜いて先に登る梅さんとカトさん。



ラクダのコルを通過して、いよいよこのルート最大の核心部のバットレスへと向かいます。
バットレスを突破できれば、頂上はもうすぐそこです。

ラクダのコルも幕営適地で、テントの跡がいくつかありました。



ラクダのコルから階段状の草付きを一段登って、核心の一枚岩のスラブへ。
1ピッチだけなので、ジャンケンで勝った僕がリードで登攀。

プロテクションは残置ハーケンが豊富にあります。
スタンスは細かいですが、アイゼンの前爪で立つには十分で、快適に登れました。



核心の凹角を登るHSG。



ロープをフィックスして、セカンド以降はタイブロックで登りましたが、僕はもう眠気が限界で、待っている間に仮眠。
寝不足のせいだと思いますが、この辺りから高山病っぽくなってしまい、頭痛と吐き気があってちょっとしんどかったです。



そして山頂に到着。
明神岳の山頂には1人用のテントなら張れそうな、綺麗に平らになっているスペースがあり、ここにテントを張ったら気持ちよさそうだなと思いました。



山頂で前穂と奥穂をバックにドヤる僕。
東稜の雪は大分少なかったように思いますが、こうしてみるとそれなりに残雪期の穂高な感じがします。

2年連続で5月に上高地からアルパインのルートを登りましたが、この時期の穂高の景色はとても綺麗で、何度見てもいいなと思います。



山頂からは前穂の方面に少し歩いて、奥明神沢を下降。
奥明神沢の雪がちゃんとつながっているかがずっと気がかりでしたが、コルからしっかりつながっていてホッとしました。

降り始めは傾斜がかなり急なので、ダブルアックスで後ろ向きで下降開始。
延々と同じ動きを繰り返すのに疲れて、途中で何度も休憩しながら降りましたが、登りでは大分バテていたそーたが雪渓の下降になったら何故か元気いっぱいで、僕よりもかなり速く下降していきました。

1時間半ほどで岳沢小屋まで降りて、そこからは二手に分かれて、元気が有り余っているカトさんとHSGは登山道を駆け下りて小梨平にデポしてあるテントを撤収に行き、僕と梅さんは歩いて下山。

そんなこんなで15時過ぎに小梨平に到着し、荷物をまとめて帰りました。
少ない睡眠時間で14時間の行動となり、なかなかきつかったですが、まだ帰りの東京までの運転が残っているので、このルートを日帰りでやる場合は、家に帰るまでが真の核心だと思います。
僕はもう起きていることができず車の助手席で眠っていましたが、HSGが頑張って運転してくれて、気が付いたら僕は東京にいました。

また今回の山行中、要所要所でカトさんが判断してロープを使用することがありましたが、そのときの一連のロープワークが神速過ぎて衝撃を受けました。
まだまだ頑張らないといけないことがたくさんあるなぁと思いましたが、とりあえず今回も素晴らしい経験が出来て、仲間たちに感謝です。

山岳会に長く居ると、当然みんな少しずつ歳をとって、一緒に登っていた仲間たちも環境やライフステージの変化があったり、新しい仲間が入ってきたりして、そのときどきで一緒に登る仲間が変わっていったりもするし、気が付けば意外と長いこと一緒に登ってたりする人も居たりします。

中には一人でやる人も居るけど、山登りって基本的には一人ではできないことだから、色々なことがあって面白いと思います。
そんなことを感じた、久々のアルパインクライミングでした。


今回のルート


5月14日
1:05 小梨平
↓ 4時間22分
5:27~5:56 ひょうたん池
↓ 2時間46分
8:42 ラクダのコル
↓ 2時間4分
10:46~11:26 明神岳
↓ 20分
11:46~12:17 奥明神沢のコル
↓ 1時間26分
13:43~13:57 岳沢小屋
↓ 1時間18分
15:15 小梨平
Comment Box is loading comments...


アルパインクライミングの記録まとめへ

山日記メニューへ