峰ノ松目沢 南東沢
1月の会の山行で八ヶ岳に行ってきました。
僕のパーティは、僕と梅さんとそーたの3人で、峰ノ松目沢にアイスクライミングへ。
今シーズンの冬は比較的暖かい日が続いていましたが、先週ぐらいから東京の方でもグッと寒くなり、出勤のときなどは寒さで耳が痛く、やっと冬らしい寒さがやってきたという感じです。
そんな中での八ヶ岳で、ヤマテンの赤岳の予報では日中でも気温はマイナス15度で、冬型の気圧配置で西風が強いとのこと。
ここ何年かは厳冬期に八ヶ岳のルートを登ってなかったので、久しぶりにしっかりした寒さを感じることになるなと思い、気合を入れて厳冬期用のレイヤリングで出発。
厳冬期の八ヶ岳は久しぶりですが、これまでにも何度も来たことはあります。
赤岳主稜、広河原沢3ルンゼ、旭岳東稜、阿弥陀岳北西稜、稲子岳左方カンテなど、どの山行も、楽しかった思い出だけでなく、辛かった記憶も同時に思い起こされます。
そして今回はこれまでと大きく違うところが1つあり、自分がリーダーとして新人を連れていく立場なのです。
これまでは泣き言を言う側だった僕が、泣き言を言われる(かもしれない)側に回るわけで、仕事でもそうですが、この差は非常に大きなものです。
最初は僕とそーたの2人で計画してましたが、自分でも少し不安があったので、僕が最も尊敬するBBAこと梅さんにも声をかけて、一緒に来てもらうことにしました。
出発時にちょっとしたトラブルがあり、あやうく車ごと全員オシャカになるところでしたが、無事に苦難を乗り越えて、6時半頃に美濃戸口を出発。
前日の夜からこの日の朝にかけて降雪があり、朝には止むという予報でしたが、歩き始めてもなかなか雪が止まず、堰堤広場を過ぎた辺りでようやく雪が止みました。
出発から2時間半で、堰堤広場を過ぎてから4つ目の橋を渡ったところに到着し、そこで装備を整えて、登山道から離れて峰ノ松目沢の方へ向かいます。
ちなみに峰ノ松目沢は南西沢と南東沢があり、どちらもアイスクライミングのルートとして登られているようですが、今回僕らが行ったのは南東沢です。
ここまでの歩きで結構汗をかいてしまい、準備を整えている間に汗冷えして、指先の感覚が無くなり、足の指も痛み出しました。
ちなみに偶然ですが僕も赤いアウターと黒いパンツだったので、3人とも同じ格好でした。
登山道を離れてから西へ進み、細い沢筋を1つ通り過ぎて、2つ目に出てくる広い沢筋が峰ノ松目沢です。
この日は晴れる予報だったのですが、雪は止んだものの一向に晴れる気配は無く、どんよりとした空でした。
15分ほど沢筋を歩き続けるとF1が見えてきました。
右側は傾斜が緩くて簡単に登れるので、ここはロープを出さずにフリーソロで登攀。
F2はなかなかの大きさで、傾斜もあるのでロープを出して、僕がリードで登りました。
見た感じはスタンスが階段状につながっているように見えたので、これは楽勝だろうと思って登り始めましたが、登っている途中で氷の表面に直径20cmほどの穴が開いているところがあり、穴の奥から水が流れている音が聞こえて、下手したらその辺りが丸ごと崩壊するんじゃないかと思い、とても怖かったです。
F3から後は簡単に登れる小滝が連続するので、各自で自由にどんどん登って行きます。
F5を越えたところで、沢筋を先の方まで見通すことができて、この沢のハイライトのF8もしっかり凍っているのが見えました。
F8の右上にもう1つ滝が見えますが、その滝は見るからに薄いので、F8まで登ったらそこから同ルートを下降することにします。
これが核心のF8。
短い滝ですが、登り始めの少しだけ垂直の部分があります。
F8に到着した時点で12時半頃で、下降にかかる時間を考えると、全員でこの滝を登る時間は無いだろうという話になり、僕だけこの滝を登って降りることにして、空身でトライ。
こないだの広河原沢左俣の大滝を登ったときに、登っている途中で腕がパンプしてきてかなり怖い思いをしたので、今回はヤバくなったらすぐアックステンションをかけられるように準備をしてきました。
アックステンションのやり方は、一般的なフィフィを使う方法など色々ありますが、今回は山岸尚将さんの「教科書になかった登山術」に書いてあった、スリングとカラビナでアックスとビレイループを連結する方法を採用し、右手のアックスを高いところに打ち込めば、そのままアックステンションをかけられるようにしました。
僕はスポートやクラックのクライミングでは、ちゃんとフリークライミングの精神に拘って登りますが、アイスクライミングのスクリューを打つという作業に関しては、そこまで含めてフリーでやろうという気持ちにはなれません。
なので、登りながらスクリューを打つのが難しい垂直のところではすぐにアックステンションをかけて、その状態でスクリューを打って登りました。
この滝は氷がとても硬く、スクリューの先端を捻じ込んでハンドルを回すだけでも、途中で腕がパンプしてしまい、レストを入れながらでないとスクリューを打つのも難しかったです。
そんなこんなで、ロープには一度もテンションをかけずにトップアウトし、懸垂下降の支点に使えるものを探してしばらく滝の上を彷徨い歩き、無事にスクリューを回収して降りたときには、登り始めてから小一時間が経ってました。
F3からF7のフリーソロで登ってきた簡単な滝も、降りるとなるとクライムダウンは無理なので、全て懸垂で下降。
だいたい滝の上にちょうどいい木があり、人気ルートだけあって残置のスリングもビナもあったので、ありがたく使わせてもらいました。
下降を始めてから1時間半ほどで、6ピッチの懸垂下降を終えてF1の下に到着しました。
登っている間はずっと曇ってましたが、下降の途中からようやく晴れてきて、赤岳や阿弥陀岳が見えました。
その後は1時間半ほどの歩きで美濃戸口まで戻り、17時に駐車場まで到着。
この沢はアイスクライミングの入門者向けルートとされていますが、傾斜が緩い滝が多くて降雪があると埋まってしまうようなので、今回はF8まで全ての滝を登れて良かったです。
心配していた寒さも、南東向きの沢だったこともあって西風の影響はほとんどなくて、アプローチのときにちょっと汗をかいて一時的に末端の感覚がなくなるだけで済み、手袋の中で手を握ったりするだけで事なきを得ました。
今回は時間の都合もあり、アイスクライミングを楽しめるところだけ楽しんで下降してきたので、今度行くときはちゃんと上まで抜けて、峰ノ松目のピークを踏んで帰ってきたいです。
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