岳沢 コブ尾根


2023年5月11日(木)~12日(金)
kwtさんとコブ尾根を登ってきました。

kwtさんは月稜会の先輩ですが、一緒にアルパインのルートに行くのは初めて。
相当な体力モンスターだという噂なので、僕がついていけるのか、少し心配です。

朝の7時過ぎに新宿を出るバスに乗って、12時に上高地に到着。
まずは1日目の目的地の岳沢小屋に向けて歩き始めます。

幸いなことに2日間とも天気は晴れの予報で、青い空に残雪の穂高がとてもよく映えてました。
今年は雪解けがかなり早いみたいで、この時期にしては雪が大分少ないようです。



この巨大な赤ザックを背負っているのがkwtさんです。
岳沢小屋が近くなってきて、だんだんコブ尾根が見えるようになってきました。



14時半頃に岳沢小屋に着いたので、テントを設営してから、コブ尾根への取り付きの辺りを偵察。

岳沢小屋の裏からコブ沢の雪渓に入ると、立派なコブのあるコブ尾根が見えてきます。
やっぱり雪が少なくて、雪渓が途切れているところもありましたが、概ね雪渓を辿って稜線までは上がれそうな感じだったので、偵察を終了してテントに戻りました。



今回はなんとkwtさんが食当をやってくれるということで、夕飯は何が出るのか楽しみにしていましたが、何と焼肉でした。
しかもご飯はアルファ米ではなく、生米から炊飯。
プチトマトと味噌汁と韓国海苔まで用意されていて、2合あったご飯もあっという間にペロリと平らげてしまいました。
山で食べるご飯は何でも美味しいですが、やっぱり結局のところ肉と米が最強です。



すっかり満腹になった後は、コーヒーを飲みながら、上高地の奥に見える六百山や焼岳などの山々が夕日に照らされる様子を眺めてまったりとした時間を過ごします。

夕飯に食べた焼肉とご飯の感動が頭から離れなくて、今度1人でテントを担いで山に行くときは、もうウルトラライトとか言ってないで、必ずフライパンと肉と米を持っていこうと、そんなことを考えながらずっと山を眺めていました。

寒くなってきたので19時にはテントの中で寝袋に入りました。
翌日は明るくなるまでに稜線近くまで行くことを目標に、2時半起床で3時半に出発する予定にして就寝。

以前どこかの山に前泊で行ったときに、なかなか寝付けなくて翌日辛い思いをしたことがあったので、今回は会の先輩のH氏からもらった、飲むとすぐに眠れるクスリを服用してみたら、本当にすぐに眠れて、しっかり7時間以上眠ることができました。



翌朝は3時20分に出発し、コブ沢の雪渓を登ります。
僕らの他にもコブ尾根を登るガイドのパーティが1組居て、僕らより30分ほど先に出発していきました。

雪は締まっていて固く、アイゼンがよく効いて登りやすいですが、先行するkwtさんから遅れないように頑張って登ると、すぐに息があがってしまいます。
kwtさんから、身体を横に向けて歩くと疲れにくいというアドバイスをもらい、横に向けて登ってみると、確かに前を向いて登るよりも力を使わずに登ることができます。

傾斜が強くなってきたら左足をフロントポインティングでスリーオクロックにしたり、左足が疲れたらナインロクオックにしたり、使う筋肉を変えながら、なるべく止まらないように登り続けました。
僕の身体のクセの問題なのか、身体を右に向けて登ると登りやすいのに、左に向けて登るとなんだかギクシャクして上手く登れず、基本的に右を向いて登りました。

そうすると当然疲れ方に偏りができてしまい、後日の話になりますが、右足に比べて左足のふくらはぎが酷い筋肉痛になりました。
今後はちゃんと左向きでもスムーズに登れるように、ちょっと頑張って練習しないといけないと思いました。



稜線に出たあたりで、時刻はちょうど5時。
すっかり明るくなってきて、後ろを振り返ると明神岳がよく見えます。



手前の緑のモサモサしたのがマイナーピークで、その向こうに見えている大きな岩塔が核心のコブです。



マイナーピークの頭からは懸垂下降で下ります。
ちょうど先行パーティがコブに向かって雪壁を登っているところでした。



そして僕らもついに核心のコブの取り付きに到着。
ここから3ピッチのクライミングになるので、リードジャンケンをしましたが、僕はジャンケンに負けてしまったので、kwtさんのリードで登攀開始。

僕がリードできたのは2ピッチ目だけですが、2ピッチ目が核心だったのでリードできてよかったです。
核心の部分はちょっと難しかったので、そこだけグローブを外して素手になって登りました。



3ピッチ目も簡単な岩稜という感じでしたが、ここでキャメロットの2番がスタックしてしまい、回収できなくなってしまいました。

最初のうちは微かに動かすことができましたが、色々試しているうちに完全に動かなくなりました。
残置することだけは避けたかったので、バイルでガンガン叩いてカムを破壊して回収しようとしましたが、壊し方も分からないので適当に叩くだけでは何も変化がありません。

これまで何度も命を預けてきた僕のカムだったので、今までありがとうという気持ちで目礼し、泣く泣く残置してその場を後にしました。



コブの頭まで登ると、また先行パーティが先の方を登っているところが見えました。
先行パーティはもう少しで頂上に着きそうな感じです。



コブの頭からまた懸垂下降で下りて、そこからまた雪壁を登ります。
この時点で時刻は8時を過ぎてましたが、日が高くなってきて雪が腐り始めてきて、爪先を蹴り込んで乗り込むと、ズズッと滑る感じがして少し怖かったです。



その後は文字通り「岩と雪」という感じで、岩を登ったり、雪壁を登ったりが交互に出てくる感じでした。
念のためロープを結んで登攀。



登っている間、右の方を見るとずっと明神岳が見えてましたが、いつの間にか明神岳よりも高いところまで登ってきてました。
明神岳の左には前穂、そして前穂の北尾根も少しだけ見えています。
残雪期の前穂北尾根にもいつか登ってみたいし、明神岳主稜も面白そうです。



最後の雪壁を登り終え、頂上に到着した瞬間の僕。
左側に見えているのがジャンダルム、右が奥穂。
両方とも山頂標が見えるぐらいすぐ近くでした。



10時36分、ようやくコブ尾根の頭に到着しました。
コブの岩場の登攀が核心だと思ってましたが、その後の若干雪が腐ってくる時間帯での雪壁の登攀や、微妙に緊張する感じの岩場が続くところが結構長くて疲れました。



頂上まで来ると、今まで見えなかった北側の山々も見えます。
左端の方が笠ヶ岳で、真ん中か右の辺りが多分双六岳とか鷲羽岳だと思います。



下りは天狗沢の雪渓を下りるので、西穂の方へ向かって縦走路を歩きます。
稜線上は雪がなく、アイゼンを着けていると歩きにくいので、アイゼンを外したり、雪が出てきたらまた着けてという感じで面倒でした。



天狗のコルまでの道が結構長く、2時間近く歩いたところでやっと天狗のコルが見えてきました。
コルの奥に見えている天狗岩がすごい迫力です。



天狗のコルまで来たら、後はひたすら雪渓を下るだけです。
もう気温も大分高くなってきていて、雪が腐っていることで下降は逆に歩きやすく、滑るように歩いて40分ほどで岳沢小屋に到着。

小屋で飲み物を買って乾杯し、テントを撤収して15時半には上高地に着き、またバスに5時間ぐらい乗って家に帰りました。
今回は初めて残雪期に穂高エリアで登れて、雪は例年よりも大分少なかったみたいですが、それでもしっかり雪山を楽しめてすごくよかったです。
また来年の残雪期にも来たいと思いました。




今回のルート


1日目
12:25 上高地バスターミナル
↓ 2時間5分
14:30 岳沢小屋

2日目
3:20 岳沢小屋
↓ 2時間7分
5:27 マイナーピーク
↓ 44分
6:11 コブの取り付き
↓ 1時間14分
7:25 コブの頭
↓ 3時間11分
10:36 コブ尾根の頭
↓ 1時間58分
12:34 天狗のコル
↓ 43分
13:17~14:02 岳沢小屋
↓ 1時間30分
15:32 上高地バスターミナル
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