唐沢岳幕岩 左方ルンゼ
2022年3月29日(火)~30日(水)
カトさん、山さんと唐沢岳の幕岩左方ルンゼに行ってきました。
ちょうど2週間前に荒船山にアイスの練習に行きましたが、今シーズン中にまた本チャンのアルパインアイスのルートに行けるとは思ってませんでした。
1日目は大町の宿までのアプローチだけなので、のんびりと葛温泉のゲートのところを8時半頃に出発。
この辺りはお猿さんがたくさん居るみたいです。
まずは高瀬ダムまで7kmの林道歩きなので、登山靴はザックに入れて、アプローチシューズで歩き始めます。
歩いていたら、道の脇の上の方で物音がしたので、何かと思って見上げたらすぐ近くにカモシカが居ました。
1時間ちょっと歩いて高瀬ダムに到着。
切れ込んだ谷の向こうに、幕岩の巨大な岩壁が見えています。
ここから登山靴に履き替えて、アイゼンも着けて雪山に入っていきます。
細い沢を何度か渡渉し、右岸と左岸を行ったり来たりしながら登っていきます。
僕は普段はあまりストックを使わないのですが、アイスのアプローチで大体いつも渡渉があって、ストックがなくて困ることが多いので、今回はちゃんとストックを持ってきました。
1日目の核心部。
堰堤をハシゴで登るところの、ハシゴの手前の部分は膝ぐらいまで水に漬かるので、靴を脱いで裸足になり、ズボンを腿までたくし上げて行きます。
嫌だけど行くしかないと思って、覚悟を決めて裸足になり、雪の上を歩きだしましたが、僕の覚悟を遥かに上回る地獄の苦痛で、低い呻き声を上げながら、亡者のような足取りでなんとかハシゴまで辿り着きました。
ハシゴを登りきるとまた裸足で雪の上を歩かねばならず、またしても襲い来る地獄の苦痛を歯を食いしばって耐えしのぎ、平らなところに出てすぐにザックを雪の上に放り出し、ザックの上に座って足を上げて、なんとか無事に突破することができました。
僕もこれまでの人生の中で色んな辛いことや苦しいことを経験してきたつもりですが、肉体的な苦痛で言ったらこの堰堤の突破は間違いなくベスト3には入ると思います。
その後は金時の滝のところで左側のルンゼを高巻きして、さらにしばらく歩くと幕岩が目の前に大きく見えてきました。
B沢の出合から、幕岩へ向かって急な斜面を登って大町の宿に到着。
雪面を整地してテントを張り、1日目の行程はここまでで終了。
僕は岩小屋に泊まるのは初めてですが、この大町の宿は風もしのげて水場もあって、景色も良くてとても快適な場所です。
テントを張り終えた後で、左方ルンゼの取り付きの偵察に行くことにしました。
デブリだらけのB沢を詰めていきます。
大町の宿から30分ほど歩いたところで、左方ルンゼの取り付きに到着。
F1はよく分かりませんが、奥に見えている立派な氷瀑が核心のF2に違いありません。
F2の近くまで行って滝の状態を見てみましたが、ビシャビシャと水が流れる音がしていて、滝の正面から右側にかけてシャワー状に水が落ちてきています。
水をかぶるラインは無理そうですが、左側の方は大丈夫そうなので、まぁなんとか登れるだろう(カトさんなら)ということで偵察を終えて、テントに戻りました。
その後はテントに戻って夕飯を食べて、何もすることもないので19時前には就寝。
僕はこのぐらいの時期の雪山ってあまり来たことがないので、今回はウェアとか寝袋とか結構悩みましたが、この日の夜はとても暖かく、モンベルの3番の寝袋とシュラフカバーでぐっすり眠れました。
10時間ぐらい爆睡して、5時過ぎに起床。
1日目はずっと曇ってましたが、2日目は快晴で最高の天気です。
前日に偵察したときよりも雪が締まっていて若干歩きやすく、すぐ左方ルンゼの取り付きまで着いて、早速F2を登り始めます。
F2は途中から垂直になっていて、僕と山さんにはリードは難しいので、カトさんにリードしてもらいましたが、カトさんが傾斜の緩い部分を登って、垂直になるところから上を見上げてみたところ、下から見ると結構強くかぶっているらしく、これを登るのは難しいということになりました。
カトさんがビレイ点までクライムダウンしてきましたが、アイススクリューを下に打っては上のスクリューを外して少しずつ降りてきて、クライムダウンもかなり大変そうでした。
僕と山さんとしては、核心部は完全にカトさん頼りの心づもりで来ていたので、カトさんが登れないというなら、もう諦めて帰るしかないかという雰囲気になってましたが、カトさんが「あっちから巻けそうだから、巻こう。」と言い出しました。
そのままビレイ点から離れて右の方へ歩いていき、おもむろに岩を登り始めるカトさん。
カトさんが登っているところも結構難しそうだし、そもそもろくにプロテクションも取れなそうだし、内心では「え?マジでそこ登るつもりなの?」と思ってましたが、僕のそんな不安をよそに、カトさんはそのままどんどん登っていって、やがて「ビレイ解除ー!」の声が聞こえてきました。
そうして登り続けて2ピッチ目。
この凹角部分の細い氷柱を登っていくところが、後から振り返ってみても今回一番難しかったところでした。
氷柱を越えた後の藪漕ぎもなかなか辛い。
まさかアイスのルートを登りに来て藪漕ぎをすることになるとは思ってませんでした。
3ピッチ登ったところで、無事に左方ルンゼのルートに戻ることができました。
沢登りでは、登るのが難しい滝が出てきたら高巻きすることがありますが、今回やったことはそういうことで、F2を登るのが難しそうだったから、その横の登れそうなところを登って沢に戻ったということなんだと思います。
僕は今回の左方ルンゼを登るにあたって、トポに書いてあるルートを完全にトレースすることが「左方ルンゼを登る」ということだと思っていたので、ルンゼの横のわけのわからんところを登って滝を巻くなんて、全く考えが及びませんでした。
カトさんの発想はすごくクリエイティブだし、トポにとらわれずに自由に山を登っていて、スケールの大きさを感じます。
僕だって元々は、登山道を歩くだけの登山ではなく、もっと自然の山を登りたいと思ってバリエーションをやり始めたはずだったのに、と、自分が情けなく感じました。
ちゃんとルートに戻ってからは藪漕ぎもなく快適そのもの。
まだまだ上に氷瀑が続いているので、どんどん登っていきます。
多分これがF4。
結局今回はカトさんに全てリードしてもらいましたが、このぐらいの滝なら僕でもリードできそう。
来シーズンはもうちょっとゲレンデでちゃんと練習して、自分でスクリューを打ちながらリードできるように頑張りたいです。
F4の上部を登る山さん。
結構長い滝で、ふくらはぎが大分パンパンになりました。
その上の滝は、氷の上に雪が乗っていて、アイスというよりは雪壁を登っているような感じでした。
そんなこんなで終了点に到着。
もう少し上にもナメ滝があるようでしたが、見たところ完全に雪に埋まっているのでここまでで終わりにして、懸垂下降5回で下まで降りて帰りました。
結構気温が高くなってきていて、帰り道は雪が軟らかくて歩きづらかったです。
ちなみに堰堤のところの靴を脱ぐポイントは、帰りはどうしても靴を脱ぎたくなかったので、側壁を登って回り込んで降りて、無事に靴を脱がずに通過することができました。
今回のルート
1日目
8:34 葛温泉
↓ 1時間19分
9:53~10:12 高瀬ダム
↓ 3時間23分
13:35 大町の宿
2日目
6:50 大町の宿
↓ 25分
7:15 幕岩左方ルンゼの取り付き
↓ 4時間55分
12:10~12:37 終了点
↓ 1時間53分
14:30 幕岩左方ルンゼの取り付き
↓ 20分
14:50~15:25 大町の宿
↓ 2時間13分
17:38~17:45 高瀬ダム
↓ 1時間22分
19:07 葛温泉
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