北岳バットレス第四尾根主稜
2019年7月22日(月)
まーしーと北岳バットレス第四尾根主稜の日帰りにチャレンジしてきました。
この時期の広河原行きのバスは、始発が6時13分に広河原着で、最終バスが16時40分に広河原発。
日帰りする為には、始発が着いてから最終バスが出るまでの10時間27分の間に帰ってこなければなりません。
写真はスタート地点の広河原から見た北岳。
まーしーの顔がちょっと卑猥だったのでモザイクをかけてあります。
前日は0時過ぎに芦安の駐車場に到着して車中泊。
僕は眠るときはうつ伏せでないと寝付けないので、シートを倒しての車中泊はちょっと苦手。
なかなか寝付けないまま時間だけが過ぎていき、次第に危機感を感じ始めました。
(ただでさえ大変なスケジュールなのに、ここで眠っておかないと、とても体力が持たない。)
必死になって眠ろうと努力しましたが、気がつくと外はうっすらと明るくなってきて、時計を見ると4時を過ぎていました。
結局一睡もできないまま、起きて出発の準備にとりかかりました。
(もうダメだ。終わった…。)
僕はそう思いながら朝食のパンをかじりましたが、これは終わりではなく、後々まで僕の記憶に深く刻み込まれることになる伝説の始まりだったのでした。
一睡もできなかったことをまーしーに告げましたが、まーしーは「大丈夫大丈夫!」と満面の笑顔。
まぁここまで来た以上は、多少調子が悪くても行かないわけにはいかないので、頑張って行くことにします。
芦安から広河原までは、バスよりも少し早く出発する乗り合いタクシーに乗ることができて、6時ちょうどに到着。
タクシーに乗っている間はポツポツと雨が降ったり止んだりしていましたが、歩き始めてしばらくすると、だんだん空が晴れてきました。
青い空と大迫力の北岳バットレス。
この景色を見ているうちに、眠気はどこかに飛んでいきました。
二俣を過ぎて、大樺沢の雪渓を詰めていきます。
写真の右手に見える沢が多分ヒドンガリー。
ヒドンガリーを過ぎてさらに20分ちょっと歩き、B沢の出合に到着。
今回のアプローチはここからB沢を詰めて、下部岩壁はBガリー大滝を登って第四尾根の取り付きを目指します。
ここまではすごく良い天気でしたが、次第に雲が出てきました。
Bガリー大滝が見えてきました。(写真中央奥の凹角右側の斜面)
Bガリー大滝の手前でハーネスを履いてギアを装着。
雪渓からBガリー大滝に取り付きます。
いよいよここから登攀開始。
1ピッチ目は僕がリードで登ります。
簡単そうなのでここはアプローチシューズで登りました。
トポではここだけで2ピッチと書いてありましたが、今回は60メートルロープで来ていたので、ロープをいっぱいまで伸ばして1ピッチで大滝の上まで抜けました。
最初の方はクラックにプロテクションを取れますが、後半のスラブはプロテクションが取れず、絶対落ちなそうだったのでノープロで登りました。
Bガリー大滝を越えると、一旦傾斜が緩くなり、そこから左の草地の踏み跡を辿っていくとCガリーに出ます。
Cガリーを渡って右岸側を登っていくと、左側にヒドンスラブが見えてきます。
ここはまーしーがリード。
そして第四尾根の取り付きに到着しました。
この時点で10時15分。
遠くの方で富士山が頭だけ出しているのが見えます。
もうすっかり曇っていて、先がどうなっているのかよく見えません。
第四尾根は最難のピッチグレードがⅣ級+になっていますが、Ⅳ級+のピッチが3箇所があり、そのうちの1つがこの出だしのクラックです。
まーしーと相談して、このクラックは僕がもらうことになりました。
下部岩壁から数えると、これが3ピッチ目になります。
またトポの2ピッチ分ぐらい一気に登って、フォローのまーしーは駆け上がるようなスピードで登ってきました。
この辺りから雨が降ってきたので、岩があまり濡れないうちにスピード重視で登ります。
まーしーが次のピッチをリードしたところで、先行パーティに追いついたので、しばらく待ち。
写真のロープは先行パーティのものです。
先行パーティが登った後で、再び僕がリードで登り、少し登ったところで第二の核心の三角形の垂壁に到着。
事前の打ち合わせではこのピッチはまーしーに譲る予定でしたが、諸事情あって三角形の垂壁も僕が登りました。
もうこの時点では岩はすっかりビショ濡れで、三角形の垂壁はちょっと怖かったのでヌンチャクを掴んでA0で突破しました。
ちなみに、ここで一緒になった先行パーティはここから敗退することにしたそうで、降りていきました。
ここまで来たら、後はマッチ箱から懸垂下降で降りたら、その後2ピッチ登って終わりなので、僕らはこのまま登攀を続行することにしました。
その後、マッチ箱からの下降を経て、枯れ木のテラスまではまーしーがリード。
枯れ木のテラスまでもトポでは2ピッチとなっていましたが、60メートルロープで無理なく1ピッチでつなげられました。
枯れ木のテラスまでのピッチをフォローで登る僕。
後ろの方にうっすらとシルエットが見えているのがマッチ箱です。
他の人の記録で見ると、この辺りの景色は晴れていたらすごくかっこいいところのようなので、次に来るときは晴れているときに来たいです。
そして最終ピッチ。
枯れ木のテラスから、ナイフリッジをトラバースして、城塞ハングのチムニーを登ります。
トラバースの部分は難しくはありませんが、メガネに水滴が付いてほとんど見えないのと、支点が全然とれないのですごく怖かったです。
最後のチムニーも、乾いていれば快適そうな感じでしたが、何しろ濡れているので、足が滑りそうでとても緊張しました。
ちょっと傾斜のあるチムニーを抜けて、緩い傾斜のフェイスに出ると同時に喜びの雄叫びを上げ、そのまま終了点へ。
この最終ピッチのチムニーが一番楽しかったです。
終了点で装備を外して、後は歩きで山頂を目指します。
結局A0したのは三角形の垂壁のところだけだったので、あのときもっとがんばってフリーで突破すればよかったと思いましたが、まぁ今回の天候ではしょうがないので、次回はちゃんとフリーで登りたいです。
終了点から20分ほど歩いて、13時に山頂に到着。
登攀中もレインウェアは着ていましたが、もう全身ずぶ濡れ。
レインパンツは持ってきてもなかったので、下半身はビチョビチョです。
気温は多分10度ぐらいで、山頂は風もあってちょっと寒かったですが、最高の気分でした。
別に自慢するようなわけではありませんが、こんな悪条件で、しかも昨夜全く眠れてないのに、めげずに最後までがんばったんだぜっていう、自分で自分を誉めてあげたいような気持ちです。
下っている間も雨はずっと降ってましたが、何故か結構明るくて、水墨画のような幻想的な風景が広がっていました。
鳳凰三山の方は雲がなくて綺麗に見えました。
6年前にテントを買ったときに初めてテント泊縦走したのが鳳凰三山でしたが、あのときに稜線に出た瞬間に見えた北岳の姿を今も覚えています。
その北岳に、今回ようやく登ることができて、それも登山道からではなくて北岳バットレスの岩壁を登って頂上に立てたというのはとても嬉しいです。
この後、雨はどんどん強くなっていき、広河原に降りる頃には土砂降りの雨になっていましたが、無事に16時ちょい過ぎに広河原まで降りることができて、日帰りで帰ることができました。
今回のルート
6:00 広河原
↓ 1時間25分
7:25 二俣
↓ 32分
7:57 B沢の出合
↓ 1時間3分
9:00 Bガリー大滝
↓ 55分
9:55 ヒドンスラブ
↓ 20分
10:15 第四尾根主稜の取り付き
↓ 2時間25分
12:40 第四尾根主稜の終了点
↓ 20分
13:00 北岳
↓ 3時間13分
16:13 広河原
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