一ノ倉沢 烏帽子沢奥壁南稜
2018年5月28日(月)
月稜会の大先輩の岳人さん(72)と一ノ倉沢の南稜に行ってきました。
去年の秋に行ったときは、最終ピッチを残して時間切れ敗退となってしまいましたが、
クライミングの技術も、ロープワークも、あのときと比べれば大分上達した実感はあるので、今度こそ完登を目指します。
ロープウェイの駐車場を5時前に出発して、1時間ほどで一ノ倉沢出合に到着し、6時ちょうどに出合を出発。
この時期は雪渓が上までつながっているからアプローチが楽だとは聞いていましたが、
出合のところで2メートルぐらいの高さまで雪がありました。
去年はテールリッジまでの部分でかなり苦労して、特に帰りは雪渓からの下降で大変な思いをしましたが、
今回はずっと雪渓の上を歩いて、時間にして20分ほどであっという間にテールリッジに着きました。
去年はこの辺りで渡渉するところがあって、帰りは雨で増水していて大変でしたが、
今回はそういう心配もないので、かなり気が楽です。
テールリッジを少し登って、衝立岩が正面に大きく見えてきました。
この辺りから見る衝立岩は、何度見てもすごい迫力です。
テールリッジの上部のスラブ。
南稜はもうすぐです。
出合を出発してから1時間半ほどで南稜テラスに到着。
いよいよここから登攀開始です。
岳人さんの厚意に甘えて、全ピッチ僕がリードで登ります。
テールリッジを抜けてから南稜テラスまでの間に、
「中央カンテ」や「変形チムニー」などの人気ルートの取り付きを通ります。
写真の真中の大きなチムニーの1つ左の、短いチムニーを登るのが「変形チムニー」で、
中央に飛び出た顕著なカンテを登るのが「中央カンテ」。
どちらもいずれは必ず登りたいルートです。
1ピッチ目を登る僕。
1ピッチ目の核心のチムニーを登る岳人さん。
2ピッチ目のフェイスを登る僕。
同じく岳人さん。
この辺りは前回も登っているので、残置支点の位置もだいたい分かっていて順調に登れました。
3ピッチ目の草付きはロープをまとめて歩き、4ピッチ目から再びスタカットで登ります。
4ピッチ目の後半。
ここから少し登ったところでピッチを切りましたが、ビレイ解除のコールをしても岳人さんからは何の返答もなし。
20メートルぐらいしか登ってない感じだったので、声が届かないわけはないと思い、
何度も「ビレイ解除ー!」と叫んでみましたが、岳人さんの声は全く聞こえず、
仕方なくそのままロープアップして、「登ってくださーい!」と叫んでみましたが、やはり返答はありませんでした。
ロープを引っ張ったりもしてみましたが反応はなく、どうしようかと思いましたが、
少しずつロープが引けるようになったので、引き続けたら岳人さんが登ってきました。
4ピッチ目のビレイ点から大した距離はありませんでしたが、間に岩壁があるせいで、
お互いの声が全く聞こえなかったようです。
5ピッチ目を登り始めたところの僕。
写真の部分を抜けたら早めに右側の馬の背リッジに上がった方が簡単なようですが、
残置支点を辿って登っていったら馬の背に上がるタイミングを逃してしまい、
6ルンゼを結構登ってしまいました。
だんだん難しくなってきて、これはどうやら間違っているなと思い、少し引き返して馬の背に上がりました。
僕がラインを間違ったので、フォローの岳人さんも仕方なく同じラインを辿って登ってきます。
本来は岳人さんがいる辺りから左の方へ行って、早めに馬の背に上がるようです。
いよいよ最終ピッチ。
右奥の方に見えているのが、ルート全体の核心部でもある垂直のフェイスです。
核心のフェイスを登る僕。
W級だそうですが、わりと余裕をもって登れました。
最終ピッチを笑顔で登る岳人さん。
南稜終了点にて、烏帽子岩をバックに記念撮影。
岳人さんが初めて南稜を登ったのは1970年のことだそうで、今回が22回目の南稜だそうです。
滝沢第三スラブがよく見えます。
なんと、月稜会で初めて三スラを登ったのは若き日の岳人さんなんだそうです。
下降は6ルンゼを懸垂で降ります。
終了点から少し左に行くと懸垂用の支点があるので、そこから下降開始。
下降は岳人さんがトップで降ります。
2ピッチ目の懸垂。
びっくりするぐらい立派な支点があります。
4ピッチ目の懸垂。
ここがちょうど2ピッチ目の終了点の辺りです。
50メートルのロープでここからいっぱいの長さを降りると、1ピッチ目の途中辺りで止まってしまうので、
1ピッチ目の終了点のところで切って、懸垂5ピッチで南稜テラスまで降ります。
烏帽子スラブも歩いて降るのは結構悪いので、
南稜テラスからさらに1ピッチ懸垂で降りて、そこから歩いて降ります。
テールリッジの上部のスラブを降ります。
写真の手前側のトラバースの部分が「神々のトラバース」と呼ばれているところです。
登るときは普通に登れましたが、ここを降るとなるとちょっと注意が必要です。
フィックスロープがありましたが、かなり傷んでいてコアが剥き出しになっている部分もあったので、
ロープを出して懸垂で降りました。
前回はこのテールリッジの下りで、スニーカーがズルズル滑ってかなり怖い思いをしましたが、
今回はアディダスのスカイチェイサーのおかげで、滑らずに歩くことができました。
テールリッジの下部のスラブ。
ここも登るときは普通に登れましたが、降りはなかなか怖い感じです。
ここもフィックスがあったので、フィックスにセルフをとりながら降りました。
ここを降りて雪渓まで降りれば、あとは雪渓を歩いて降るだけです。
無事に出合まで降りて、さらにロープウェイの駐車場まで歩いて、出発してからちょうど11時間で駐車場に到着。
雪渓があったからテールリッジまでの往復はすごく楽で、
南稜の登り降りも大きな問題もなくスムーズに終えましたが、
それでもアプローチまで含めるとかなりの長時間行動でした。
もっと速く登れるようにならないと、中央カンテなどの長いルートは難しそうです。
去年の一ノ倉沢デビューのときは、終了点まで登れなかった上に、下山で雪渓を通過できなくなり、
100パーセント先輩達の力で窮地を脱出して、なんとか生還することができましたが、
今回は自分の力で登って帰ってくることができました。
ルートの知識が豊富で下降路も知り尽くしている岳人さんが一緒ではありましたが、
どちらかが相手に依存することもなく、お互いの力を充分に発揮できた、とても良いクライミングでした。
去年からやり残していたことを終えられて、
ようやくアルパインクライマーとしてのスタートラインに立てたように思います。
今回のルート
4:50 谷川岳ロープウェイ駐車場
↓ 1時間5分
5:45〜6:00 一ノ倉沢出合
↓ 1時間30分
7:30〜7:55 南稜テラス
↓ 1ピッチ目 7:55〜
↓ 2ピッチ目 8:30〜
↓ 3ピッチ目 8:55〜
↓ 4ピッチ目 9:10〜
↓ 5ピッチ目 9:35〜
↓ 6ピッチ目 10:30〜
11:00〜11:45 南稜終了点
↓ 懸垂6ピッチ 1時間30分
13:15 烏帽子スラブ
↓ 1時間20分
14:35〜15:05 一ノ倉沢出合
↓ 45分
15:50 谷川岳ロープウェイ駐車場