赤岳


2017年3月24日(金)〜3月25日(土)
2014年の冬シーズンに冬山教室に通ってから、
北横岳、雲取山、天狗岳、茶臼山・縞枯山と冬山の経験を重ねてきましたが、
次にどの山に行こうか、とても悩んでいました。

「いつかは赤岳」とずっと思っていましたが、どのガイドブックや雑誌を見ても、
冬の赤岳に登るには確実なアイゼン歩行技術が必須と、目にタコができるぐらい書いてあって、
じゃあ赤岳に登るためのアイゼン歩行の訓練はどこでやればいいんだろうと思っていました。

これまで行った山では、雪は多くてもアイゼン不要で歩けるような雪質のときばかりで、
天狗岳のときには森林限界を越えたところをアイゼンを着けて歩きましたが、
あのときはちょうど降雪直後のフカフカ雪だった為、
ツボ足で歩いている感覚とほとんど変わりませんでした。

やっぱり森林限界より上のところをもっと歩かないといけないと思い、
天狗岳以外で森林限界以上に出られるところを探しましたが、
電車とバスでアクセスできて1泊2日で行けるところで探すと、あまり多くは見つからず、
とりあえず硫黄岳に登ろうと考えていました。

そして、山行の日の1週間ぐらい前から、ルートの積雪状況と天気予報を入念にチェックしていましたが、
山行の日の3月25日が、全国的に高気圧に覆われて最高の天気になるらしいということが分かり、
「これなら赤岳だって登れるんじゃないか。アイゼン歩行技術は登りながら習得すればいい。」と思い、
赤岳に行くことにしたのです。

去年の天狗岳から使っていなかった90リットルのザックにテント泊装備をパンパンに詰めて、
20kg弱の荷物を背負って、11時過ぎに登山口の美濃戸口を出発。
これほどの重荷を担ぐのは久しぶりなので、美濃戸までの林道歩きの時点で肩が痛いです。



行者小屋でテントを張る予定ですが、赤岳鉱泉に寄ってアイスキャンデーを見たいので、
北沢ルートを歩きます。



橋の上に大量の雪が積もってて、横から見るとかなり怖い感じがします。



スタートしてから2時間半。
ようやく稜線が見えてきました。
大同心の存在感がすごいです。



それから30分ぐらいで赤岳鉱泉に到着。
去年の5月にここに来たときは、アイスキャンデーはすっかり溶けた後でしたが、
今年はまだ営業中なので、でかいです。
なぜか青味がかっていて不思議な色をしています。



赤岳鉱泉は南八ヶ岳で唯一の通年営業の小屋なので、今日はここがゴールの人が多いようです。
食事のクオリティが高いという評判なので、僕もいつか泊まってみたいです。

僕の目的地の行者小屋はまだ先なので、頑張ってもう少し歩きます。



赤岳鉱泉を出てから30分ほどで中山乗越に到着。
行者小屋まであと10分と書かれています。
赤岳鉱泉からここまでの登りが意外にキツく、かなり疲れました。

ここの分岐を西の方に10分ぐらい行くと展望台があるそうですが、体力的に余裕がないので今回はパス。



出発からちょうど4時間。
15時20分に行者小屋に到着し、テントを設営。
たった4時間でしたが、荷物が重かったのでかなりくたびれました。



明日はこの赤岳にアタックを仕掛けます。
地蔵尾根を登って文三郎尾根から降りる予定なので、
この写真でいうと左から登って右から降りる感じになります。
ここから見ると地蔵尾根のところはなかなか激しい傾斜に見えます。


Post from RICOH THETA. - Spherical Image - RICOH THETA
行者小屋からは阿弥陀岳、赤岳、横岳、硫黄岳といった南八ヶ岳のスター級の山々が全て見えて、とても良い景色です。
ちなみに360度カメラは今までレンタルで使っていましたが、今回とうとう買ってしまいました。



今日の夕飯は、同僚のバーチーに教えてもらった、サッポロ一番の味噌味にキムチと卵を入れたもの。
さらにワカメもトッピングして、贅沢なラーメンです。

夜はいつもどおりにダウンジャケット、ダウンパンツを着こんでテントシューズを履いて、
イスカのダウン量900gのシュラフに入って寝ましたが、どうも足先が冷えるので、
念のために持ってきていたカイロを足の裏に貼って、ようやく眠りに就くことができました。
外の気温が何度だったのかは分かりませんが、予報では25日の朝の赤岳山頂の気温がマイナス14度だったので、
多分マイナス10度ぐらいだと思います。

翌朝は朝5時に起床。
水筒の水が凍らないようにシュラフの脇に置いておいたのですが、起きたら7割方凍っていました。
完全に凍ってはいなかったので、お湯を沸かして水筒に戻してという作業を何度か繰り返して、なんとか水にすることができました。
やっぱり水筒はシュラフの中に入れておかないとダメですね。



6時50分に出発。
しばらくは静かな樹林帯の中を歩きます。



30分ぐらい歩いたところで、森林限界を越えた辺りから傾斜も急になってきます。

アイゼン歩行の訓練をしながらの登りだったので、歩き方を色々試してみました。
登りに関しては、普通に平行に足を置いて歩くのが難しいようなところは、
ダックウォーク(逆八の字)でかなりの傾斜まで対応できることが分かりました。
鉄階段が埋まっているような急傾斜のところは、片足はフロントポインティングで登りましたが、
フロントポインティングはふくらはぎが凄まじく疲れます。
斜面に対して斜めに登るところはスリーオクロック(ナインオクロック)でと、一通りの歩き方を試すことができました。

今回、赤岳に登るにあたって、最も心配していのは雪崩でした。
3月21日に降雪があり、赤岳鉱泉のブログによると、3月21日の夕方の時点で新しく5cmの湿雪が積もっていて、
累計では150cmの積雪となっているということでした。
実際、3月23日に硫黄岳の赤岩の頭直下で小規模の雪崩の跡が発見されたそうです。
地蔵尾根も文三郎尾根も状況によっては雪崩が起きることもあると聞いていたので、そこだけがとても心配でした。
しかし登り始めてみると雪はしっかり締まっているようで、気温も21日以降ずっと下がり続けているし、
トレースもしっかりあるし、これならきっと大丈夫だろうと思って登ることにしました。

雪崩については、冬山登山教室で教わった知識しかありませんが、
現場で斜面がどういう状態だったらやめた方がいいのか、というところがまだよく分かっていません。
来年あたりに雪崩の講習会でも受けてみようかと思います。



地蔵尾根の核心部、地蔵の頭直下のナイフリッジ。
リッジの左側のトラバースは問題ありませんでしたが、
トラバースが終わった後で岩の上に立ち上がるところが、高度感もあり、
アイゼンで岩の上に立つのが不安定で、少し怖かったです。



ナイフリッジを上から見たところ。
上から見るとなかなかの傾斜で、ここは降る方が怖そうです。



とうとう稜線に出ました。
雪を被った赤岳が青空に映えて、すごく綺麗です。



ちょうど赤岳を登っている人が見えます。



振り返ると横岳と硫黄岳。
横岳の岩場が雪で埋まっていて、こうして見ると雪が無いときよりも逆に簡単そうに見えます。



時折、風が吹くことはありましたが、ほとんど無風と言っていいぐらいで、
登りはなかなかキツイですが最高に快適です。



頂上山荘が間近に見えてきました。もうあと少しで頂上です。



そしてついに頂上に到着!
誰もいなかったので、カメラを岩の上に置いてセルフタイマーで自撮り。


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山頂からの景色。
北アルプスも中央アルプスも南アルプスも富士山もよく見えます。



下りは文三郎尾根から下ります。
こっちの道は、山頂直下の岩場の下降が核心部らしいです。
岩場をアイゼンで下降するのは、ちゃんと立てているのかよく分からないので怖いです。

でもすごく短くて、気がついたら通過していたので写真に撮りそびれました。



岩場の後の斜めに下るところも、なかなか気の抜けないところです。
ここで今日初めて人に出会いました。



この辺りからはトレースがしっかりし過ぎていて、
トレースというよりは誰かが道を作ったみたいになっていました。



文三郎尾根の分岐に到着。
冬の阿弥陀岳にもいつかは登りたいですが、今日は行者小屋の方へ降ります。



この時点で9時半ぐらいでしたが、ちょうど文三郎尾根を登ってくる人が多く、下の方まで点々と人が続いています。



僕が登ってきた地蔵尾根は、遠すぎて登っている人影までは見えません。

この写真を撮っているときには気がつきませんでしたが、右下の方にクライマーさんが見えます。



後で調べて分かりましたが、これが赤岳主稜ルートみたいです。
人気のルートみたいで、順番を待っている人たちも居ました。



こういう雪稜の感じがすごく好きです。
文三郎尾根もところどころ傾斜がかなり急なところがあり、ダイアゴナルで降りるようなところも何箇所かありました。
登りとはまた違ったアイゼンワークが必要で、なかなか勉強になりました。



出発から約4時間で、10時40分に行者小屋に到着して、テントを撤収して下山開始。
冬山のテント泊も回数を重ねて慣れてきた感があり、今回の撤収はオーバーグローブを一度も外さずに終えることができました。
カメラの操作もオーバーグローブを外さないでできるように練習したので、
今回はテントを出発してから撤収まで、ずっとオーバーグローブを着けたままでいられました。
去年の天狗岳のときは、プチ凍傷みたいになってしばらく指先の痺れがとれませんでしたが、今回は大丈夫そうです。

帰りは南沢ルートを歩きます。



13時50分に到着。
一昨年ぐらいに美濃戸口に出来たレストランがあり、そこの庭ででかい犬が眠ってました。



お腹が空いたので、レストランでステーキでも食べようかと思いましたが、
値段が結構するので、八ヶ岳山荘のカレーでお昼ご飯。

無事に積雪期の赤岳を登ることができて、とても嬉しいですが、天候条件が良すぎて、イージーモードの赤岳だったような感じがします。
何だか、「冬の赤岳に登った」という感じが薄いので、今度はもうちょっと条件が悪いときに来てみたいです。
まぁ3月の下旬なので、時期的にはもう春山なのかもしれませんが。


今回のルート

1日目
11:17 美濃戸口

12:08〜12:19 美濃戸

13:05 堰堤広場

14:15〜14:37 赤岳鉱泉

15:20 行者小屋

2日目
6:51 行者小屋

8:02 地蔵の頭

9:00〜9:15 赤岳

9:35 文三郎尾根分岐

10:40〜11:30 行者小屋

12:54〜13:10 美濃戸

13:50 美濃戸口